長野地方裁判所 昭和52年(わ)51号 判決 1977年10月17日
本籍
長野県長野市大字高田八七〇番地
住居
右 同
職業
会社役員兼農業
木下直人
明治三六年二月四日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官山口勝之出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三〇、〇〇〇、〇〇〇円に処する。
被告人において右罰金を完納することができないときは、五〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、長野県長野市大字高田三八九番地において、木下商店の名称で鉄屑卸売業を営んでいたものであるが、右業務に関し、過少な所得金額及び税額を記載した内容虚偽の確定申告書を提出する不正の行為により、その所得税を免れようと企て
第一 昭和四八年分の総所得金額が八二、〇四三、四七五円でこれに対する所得税額が四八、三七二、二〇〇円であるにも拘らず、昭和四九年三月二日長野税務署長に対し、総所得金額が五、五三〇、七九八円で、これに対する所得税額は八八〇、九〇〇円である旨のことさら過少な総所得金額及び所得税額を記載した内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって同年分の正規の所得税額四八、三七二、二〇〇円との差額四七、四九一、三〇〇円を免れ
第二 昭和四九年分の総所得金額が一二五、一九八、五九六円で、これに対する所得税額が七八、九九〇、〇〇〇円であるにも拘らず、昭和五〇年三月一五日前記長野税務署長に対し、総所得金額が八、〇五五、〇五〇円でこれに対する所得税額は一、三九六、二〇〇円である旨のことさら過少な総所得金額及び所得税額を記載した内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって同年分の正規の所得税額七八、九九〇、〇〇〇円との差額七七、五九三、八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一、押収の売上実績表(昭和五二年押第三八号の一)
一、同昭和四九年売上高総額書等メモ二枚(同押号の二)
一、同昭和四九年売上入金調メモ等九枚綴(同押号の三)
一、同財産関係メモ七枚綴(同押号の五)
一、収税官吏矢島義幸作成の売上金額・売掛金額調査書
一、同人作成の売上先別振込入金額調査書
一、同人作成の取引先別取引金額調査書
一、同人作成の銀行調査額・答申額との不符合額調査書
一、同人作成の仕入金額・買掛金額調査書
一、同人作成の仕入先別振込支払金額・経費支払先別振込支払金額調査書
一、同人作成の現金仕入認容額・経費の現金支払認容額調査書
一、同人作成の現金出納調査書
一、収税官吏外谷水城作成の事業主貸借調査書
一、同人作成の各年度別給料等調査書
一、収税官吏矢島義幸作成のたな卸金額調査書
一、同人作成の非鉄金属数量計算調査書
一、収税官吏外谷水城作成の荷造運賃等調査書
一、収税官吏矢島義幸作成の経費未払金調査書
一、同人作成の普通預金払戻(特約分)調査書
一、同人作成の固定資産減価償却調査書
一、収税官吏小林定雄作成の預金・借入金等調査書
一、収税官吏外谷水城作成の受取手形調査書
一、長野税務署長藤井主計作成の一〇月五日付証明書二通(昭和四八年度、同四九年度分)
一、収税官吏矢島義幸作成の修正損益計算書二通(昭和四八年度、同四九年度分)
一、同人作成の調査所得(調査による増減金額)の説明書二通(昭和四八年度、同四九年度分)
一、同人作成の脱税額計算書二通(昭和四八年度・同四九年度分)
一、長野税務署長藤井主計作成の一二月二五日付証明書二通(昭和四八年度、同四九年度分)
一、収税官吏矢島義幸作成の調査書の一部訂正についてと題する書面
一、木下雅裕(三通)、田尻和男、矢島義幸の検察官に対する各供述調書
一、証人山本菊次郎、同鈴木政行の当公判廷における各供述
一、被告人の検察官に対する供述調書二通
一、被告人の当公判廷における供述
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいづれも所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、所定刑中懲役刑と罰金刑を併科し、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については所得税法二三八条二項、刑法四八条二項に則り各罪につき免れた所得税額に相当する金額及びその合算額以下で処断すべく、以上の刑期及び罰金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三〇、〇〇〇、〇〇〇円に処し、罰金不完納の場合の労役場留置につき刑法一八条、懲役刑の執行猶予につき同法二五条一項、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 中野武男)